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M&A AdvisoryFractional CFO

ターミナルバリュー

Terminal Value

読み: たーみなるばりゅー

定義

ターミナルバリュー(Terminal Value, TV)は、DCF 法で予測期間(通常 5〜10 年)の終了後に、対象事業が永続的に生み出すキャッシュフローの現在価値。継続価値残存価値残余価値とも呼ぶ。

算定方法

永久成長モデル(Gordon Growth Model)

最も一般的な方法:

TV = FCF_(n+1) ÷ (WACC − g)

  • FCF_(n+1):予測期間最終年度の翌年 FCF
  • WACC:加重平均資本コスト
  • g:永久成長率(Perpetual Growth Rate)

マルチプル法(Exit Multiple Method)

予測期間最終年度の EBITDA にターゲットマルチプルを乗じて算定:

TV = EBITDA_n × Terminal EV/EBITDA Multiple

業界のマチュリティ段階のマルチプル(通常 5〜8x EBITDA)を用いる。IPO 企業の同業他社や M&A 取引事例がソース。

両方法のクロスチェック

実務では両方法で算定し、相互に検証するのが標準。永久成長モデルの g と、マルチプル法が暗黙に前提とする g の整合性を確認する。

企業価値に占める割合

DCF で算定される企業価値(EV)のうち、ターミナルバリューは 60〜80% を占めるのが一般的。高成長企業や長期予測期間の場合はさらに高い。したがって TV の前提の置き方がバリュエーション全体を決定する。

事業の特性TV の EV に占める比率
成熟・低成長事業50〜65%
中成長事業65〜75%
高成長・スタートアップ75〜90%

実務上の論点

  • 永久成長率 g の上限。g は長期の名目 GDP 成長率(日本:1〜2%、米国:2〜3%)を上回るべきではない。g = 永久に GDP 成長を上回る事業 = 経済全体より大きくなる、という矛盾が生じるため
  • WACC − g のスプレッドが小さいほど TV は急拡大(分母ゼロに近づく)。g = 2%、WACC = 8% なら TV は安定するが、g = 3%、WACC = 5% なら非常に敏感
  • Steady State への移行。予測期間最終年度が「成熟状態」を反映していなければ、TV 算定は歪む。設備投資 = 減価償却、ΔNWC = 売上成長率 × NWC Margin 等の Steady State 条件を確認
  • 二重の楽観性に注意。高い予測期間成長率 + 高い g を同時に置くと、バリュエーションが恣意的に膨らむ。予測期間で高成長を織り込んだら、g は保守的に(1〜2%)置く

CFO・経営者視点での論点

  • 敏感度分析の必須性。TV が EV の大半を占めるため、g ± 0.5%、WACC ± 0.5% の感応度表を必ず提示する
  • DCF の限界認識。TV の前提依存度が高すぎる事業(例:プレ PMF スタートアップ、R&D ステージのバイオ)では DCF 単独は使わず、マルチプル法・リアルオプション・シナリオ分析を併用
  • 投資家・取締役会とのコミュニケーション。「DCF で EV = 100 億円」ではなく「g = 2%、WACC = 8% の前提で 100 億円、g = 3% なら 130 億円」と前提を明示して議論する

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