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M&A AdvisoryFractional CFO
DCF法
Discounted Cash Flow Method
読み: でぃーしーえふほう
定義
DCF法(Discounted Cash Flow Method)は、将来生み出されるフリーキャッシュフローを、加重平均資本コスト(WACC)で現在価値に割り引いて企業価値を算定する評価手法。インカムアプローチの代表格で、国際的にも日本の実務でも最も広く用いられる。
企業価値 = Σ(各年度の FCF ÷ (1+WACC)n)+ ターミナルバリューの現在価値
会計基準・実務上の位置づけ
DCF 法そのものは会計基準ではなく経済的評価手法だが、日本公認会計士協会 「企業価値評価ガイドライン」(経営研究調査会研究報告第32号)がインカムアプローチ・マーケットアプローチ・コストアプローチの3類型を示し、DCF をインカムアプローチの中核として位置づけている。
会社法上、組織再編の対価の相当性(会社法第795条第2項等)や反対株主の株式買取請求(会社法第785条・第469条)における「公正な価格」の算定で、DCF 法は裁判例でも中心的な手法として採用されてきた。代表例が**最決平成24年2月29日 テクモ株式買取価格決定申立事件(民集66巻3号1784頁)**で、DCF による価値評価が株式買取価格算定の基礎となった。
IFRS 適用企業では、IAS 36 Impairment of Assets の減損テストにおける使用価値(Value in Use)算定で DCF が強制的に登場する。日本基準では企業会計審議会「固定資産の減損に係る会計基準」(2002年8月9日)および同適用指針(企業会計基準適用指針第6号)の将来キャッシュフロー見積もりで類似の計算を行うが、税効果の取扱いや割引率の設定方針で実務が異なる。
CFO・経営者視点での論点
- WACC の前提が結果を支配する。ベータ値(上場類似会社の選定)、リスクプレミアム、負債コストの3要素のいずれを動かしても企業価値は数十%単位で変動する。独立系アドバイザーによるセカンドオピニオンの価値は、この前提の妥当性を独立に点検できるかにかかる
- 事業計画 horizon(明示予測期間)とターミナルバリューの比率。非上場中堅企業の評価ではターミナルバリューが全体価値の 60〜80% を占めることが多く、終価成長率 g の 0.5% の変動で評価額が大きく動く。明示予測期間を 5 年とするか 10 年とするかの判断が、実は結論を左右する
- 減損テストと M&A バリュエーションで同じ DCF を使う際の整合性。M&A 交渉で強気の事業計画を提示し、翌期の減損テストで同じ前提を維持できずに減損損失を計上する——という事故は実務で散見される。CFO は両用途で使う前提の整合性に責任を持つ