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Capital Strategy
バリュエーションキャップ
Valuation Cap
読み: ばりゅえーしょんきゃっぷ
定義
バリュエーションキャップ(Valuation Cap)は、J-KISS(Japan-Keep It Simple Security)や SAFE(Simple Agreement for Future Equity)等のコンバーティブル・エクイティ投資で用いられる条項。次回の資金調達ラウンド(Qualified Financing)で投資額が株式に転換される際、転換時に適用される企業評価額の上限を定める。
具体的には、次回ラウンドの評価額と Cap の 低い方を用いて転換価格を計算する:
転換価格 = min(次回ラウンド Pre-money Valuation, Valuation Cap) ÷ 転換時の発行済株式数
これにより、次回ラウンドで高いバリュエーションがついても、シード投資家は Cap ベースでの株式数を確保でき、実質的な取得単価が保証される。
実務上の位置づけ
J-KISSは Coral Capital(旧 500 Startups Japan)が 2016 年に公開したひな型で、日本のシード投資のデファクトスタンダード。SAFE は Y Combinator が 2013 年に公開した米国のスタンダード。
典型的な構成:
- Cap のみ(Cap-Only) — ディスカウントなし、バリュエーションキャップのみ
- Discount のみ(Discount-Only) — 次回ラウンド価格からの一定率割引(通常 20%)のみ
- Cap + Discount — 両方設定、投資家有利な方を適用(Most Favorable Terms)
- MFN(Most Favored Nation) — 後続投資家により有利な条件で投資が行われた場合、遡って同条件を適用
CFO・経営者視点での論点
- Cap の水準が次回ラウンドの交渉の起点となる。投資家から見ると、Cap は次回ラウンドの評価額の「事実上の上限」としてアンカリング効果を持つ
- 希薄化の予測が困難。Cap を低く設定しすぎると、次回ラウンドでの既存株主(創業者含む)の希薄化が想定を超える
- Cap 超えでの転換調整。次回ラウンドのバリュエーションが Cap を大きく超えた場合の取扱い(Cap 適用 vs 時価適用)を明確に文書化しておく必要がある
- 複数の J-KISS / SAFE が混在する場合、Cap がそれぞれ異なると転換後のキャップテーブルが複雑化。発行順・条件の整合性を管理する