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M&A AdvisoryFractional CFO
のれん
Goodwill
読み: のれん
定義
のれん(Goodwill)は、企業結合(M&A)において取得原価が被取得会社の識別可能な資産・負債の公正価値(識別可能純資産)を超過した部分。ブランド、顧客基盤、技術ノウハウ、人的資本、シナジー期待等、個別資産として識別できない超過収益力を表す。
のれん = 取得原価 − 被取得会社の識別可能純資産の公正価値
会計基準上の位置づけ
日本基準(企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」)
- 20 年以内の均等償却が原則。効果の及ぶ期間を合理的に見積もる
- 減損テストは「減損の兆候」があった場合のみ実施
- 負ののれん(取得原価 < 純資産公正価値)は、発生した期の特別利益として計上
IFRS(IFRS 3「企業結合」/ IAS 36「減損」)
- 非償却。毎期必須の減損テストと、兆候あり時の追加テスト
- キャッシュ・ジェネレーティング・ユニット(CGU)単位で減損判定
- 負ののれんは「バーゲン・パーチェス利益」として即時認識
差異の影響
同じ M&A でも、日本基準企業は毎期のれん償却費が P/L を圧迫する一方、IFRS 企業は平時は償却費ゼロ、ただし減損時に一度に損失認識となる。ソフトバンク G のような大型 M&A を繰り返す企業は IFRS 採用が通例。
PPA(Purchase Price Allocation)
M&A 完了後、取得原価を識別可能資産・負債に配分する手続。識別可能無形資産(顧客関係、技術、商標、ソフトウェア)として切り出すほど、のれん残高は圧縮される。
- 識別可能無形資産は耐用年数で償却(通常 5〜15 年)
- 残りが「のれん」として計上される
- 日本基準企業では PPA で無形資産を切り出しすぎると、償却費がむしろ増加する場合もある
実務上の論点
- のれん減損リスクの管理。買収後の事業計画未達が続くと減損の兆候となる。M&A 時の前提(売上成長率、シナジー)が後年の減損判定のベースとなるため、買収時点で保守的な計画を設定しておく
- 減損発生時の企業価値ヒット。2020 年代のコロナ禍、金利上昇局面で多くの企業がのれん減損を計上。例:武田薬品のシャイアー買収、ソフトバンク G の WeWork
- のれんの経営 KPI への影響。ROE・ROIC の分母にのれんが含まれるため、大型 M&A 後は ROIC が構造的に低下する。のれん考慮前 ROICを併用する企業もある
- 国際会計基準の比較可能性。日本基準と IFRS でのれんの扱いが異なるため、業界平均・ピア比較の際に会計基準の違いを調整する